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2話 春休みの特訓

last update Date de publication: 2026-07-28 12:22:09

 昨日柚希にどうすればリア充になれるか聞いた時の柚希の驚きっぷりを思い出して笑ってしまう。

 あんな表情の柚希を見たのは初めてだ。

 その後は「どうしたの?」「拾い食いでもしたの?」「生きるのしんどくなったの?」と散々な言われようだったが「何かあったの?」という質問に対してだけ答えた。

「柚希が俺のせいで虐められた。だから俺は変わりたい」

 俺がそう言うと

「本気なの?」

「ああ」

 という短いやり取りの後

「わかった! 私がお兄ちゃんを立派なリア充にしてみせる!」

 という心強い言葉を貰った。

 そして柚希の提案で今日からリア充に成る為の特訓をする事になった。

 今の時間は朝の7時58分

 朝から特訓するから8時にリビングに来てと言われている。

 リビングのドアを開けながら「おはよー」と入って行くと

「遅い!」

 と、いきなり怒られた。

「まだ8時になってないぞ?」

 と反論すると

「これも特訓の内なの。待ち合わせには常に5分前行動を心掛ける様に!」

「す、すまん」

 既に特訓は始まっていたらしい。

 しかし、柚希の様子がいつもと違う。

「っていうか、その喋り方はどうしたんだ?」

 という質問に対して

「私はお兄ちゃんに立派なリア充になって貰いたいの。だから厳しくいくからね!」

 俺を思っての事みたいだけど、その喋り方は全然似合ってないな。

「特訓って一体何をすればいいんだ?」

 素直に疑問をぶつけてみる。

「逆に聞くけど、リア充ってどんなイメージ持ってる?」

 質問に質問で返されてしまったが真剣に考える。

「えーっと、やたら騒いでて群れてるイメージかな?」

 俺のイメージをそのまま伝えた。

「なるほど~。じゃあ私のイメージは?」

 柚希のイメージか。

「いつも笑顔で明るくて、人懐っこくてみんなから好かれてるイメージかな」

 俺の中のイメージをそのまま伝えると

「そ、そうなんだ……」

 と言い顔を赤くしている。

「顔赤いぞ? 大丈夫か?」

「だ、大丈夫だから!」

 と言いながら顔の前で手をブンブン振っている。

 やがて気を取り直して

「お兄ちゃんが私に抱くイメージみたいに、やたら騒いで群れるだけがリア充じゃないんです! むしろお兄ちゃんがイメージしたリア充はクラスカーストだと上から2~3番目って所かな」

「そ、そうなのか……」

 流石トップカーストに属する妹さまだ。

 俺がいつもトップカーストだと思っていた連中は実はトップではなかったらしい。

「次の質問なんだけど、リア充になるには何が必要だと思う?」

 俺は考える事も無く答える。

「そりゃ見た目だろ?」

 と、俺が自信満々に答えると

「ハズレ~! まぁ、容姿が良いに越した事はないけど、それはそこまで重要じゃないかな」

 俺が「え? そうなの?」と驚いていると

「当たり前じゃん。イケメンや美少女しかリア充になれないなら世の中のリア充は数%位しか存在しなくなっちゃうよ」

 言われてみればイケメンって程じゃないのにリア充グループに居る奴がいる事を思い出す。

「じゃ、じゃあ何が必要なんだ?」

 イケメンじゃなくてもリア充になれる方法は何なんだ?

「それはズバリ! コミュ力です!」

 柚希は胸を張って言う。

 我が妹ながら可愛い。

「まぁ厳密に言えば他にも必要な物はあるけど、先ずはコミュ力かな」

 コミュ力か。俺が一番避けてきた物だろう。

「ど、どうすればコミュ力は身に付くんだ?」

 俺が柚希にすがる様に聞く。

「そこなんだよね~、う~ん」

 そう言って柚希は俺をじーっと見た後

「お兄ちゃんの場合、コミュ力以前に改善しなきゃならない事がおおいんだよね~」

 と言ってまた俺をじーっと見る。

「お、俺ってそんなにヤバイ?」

 恐る恐る聞いてみる。

「私は何で昨日ギャルグループに囲まれたんだろうね~?」

 柚希は嗜虐的な笑みを浮かべながらそう言った。

 そうだった。

 そもそも俺がリア充を目指すのは柚希が昨日のような目に合わない様にする為だった。

 そしてその原因が俺のキモさだった。

 あれ? これかなり難易度高いんじゃない?

 俺が自己嫌悪で落ち込んでいると

「ごめんごめん、冗談だから昨日の事はそんなに気にしないで」

「で、でも……」

「いいから! でも、お兄ちゃんが今どれだけリア充から遠いかは理解できたでしょ?」

「痛い程にな」

 そうだ。 今の俺は存在するだけで柚希を傷つける可能性があるのだ。

 そして新たに決意を固めて質問する。

「それで、俺は何をすればいい?」

 俺の本気の顔を見て柚希がニヤッと笑い

「やっと本気の目になったね。それじゃあ……」

 こうして俺がリア充に成る為の特訓が開始された。

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