Se connecter昨日柚希にどうすればリア充になれるか聞いた時の柚希の驚きっぷりを思い出して笑ってしまう。
あんな表情の柚希を見たのは初めてだ。 その後は「どうしたの?」「拾い食いでもしたの?」「生きるのしんどくなったの?」と散々な言われようだったが「何かあったの?」という質問に対してだけ答えた。「柚希が俺のせいで虐められた。だから俺は変わりたい」
俺がそう言うと
「本気なの?」
「ああ」という短いやり取りの後
「わかった! 私がお兄ちゃんを立派なリア充にしてみせる!」
という心強い言葉を貰った。
そして柚希の提案で今日からリア充に成る為の特訓をする事になった。 今の時間は朝の7時58分 朝から特訓するから8時にリビングに来てと言われている。リビングのドアを開けながら「おはよー」と入って行くと
「遅い!」
と、いきなり怒られた。
「まだ8時になってないぞ?」
と反論すると
「これも特訓の内なの。待ち合わせには常に5分前行動を心掛ける様に!」
「す、すまん」既に特訓は始まっていたらしい。
しかし、柚希の様子がいつもと違う。「っていうか、その喋り方はどうしたんだ?」
という質問に対して
「私はお兄ちゃんに立派なリア充になって貰いたいの。だから厳しくいくからね!」
俺を思っての事みたいだけど、その喋り方は全然似合ってないな。
「特訓って一体何をすればいいんだ?」素直に疑問をぶつけてみる。
「逆に聞くけど、リア充ってどんなイメージ持ってる?」
質問に質問で返されてしまったが真剣に考える。
「えーっと、やたら騒いでて群れてるイメージかな?」
俺のイメージをそのまま伝えた。
「なるほど~。じゃあ私のイメージは?」
柚希のイメージか。
「いつも笑顔で明るくて、人懐っこくてみんなから好かれてるイメージかな」
俺の中のイメージをそのまま伝えると
「そ、そうなんだ……」
と言い顔を赤くしている。
「顔赤いぞ? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫だから!」と言いながら顔の前で手をブンブン振っている。
やがて気を取り直して「お兄ちゃんが私に抱くイメージみたいに、やたら騒いで群れるだけがリア充じゃないんです! むしろお兄ちゃんがイメージしたリア充はクラスカーストだと上から2~3番目って所かな」
「そ、そうなのか……」流石トップカーストに属する妹さまだ。
俺がいつもトップカーストだと思っていた連中は実はトップではなかったらしい。「次の質問なんだけど、リア充になるには何が必要だと思う?」
俺は考える事も無く答える。
「そりゃ見た目だろ?」
と、俺が自信満々に答えると
「ハズレ~! まぁ、容姿が良いに越した事はないけど、それはそこまで重要じゃないかな」
俺が「え? そうなの?」と驚いていると
「当たり前じゃん。イケメンや美少女しかリア充になれないなら世の中のリア充は数%位しか存在しなくなっちゃうよ」
言われてみればイケメンって程じゃないのにリア充グループに居る奴がいる事を思い出す。
「じゃ、じゃあ何が必要なんだ?」
イケメンじゃなくてもリア充になれる方法は何なんだ?
「それはズバリ! コミュ力です!」
柚希は胸を張って言う。
我が妹ながら可愛い。「まぁ厳密に言えば他にも必要な物はあるけど、先ずはコミュ力かな」
コミュ力か。俺が一番避けてきた物だろう。
「ど、どうすればコミュ力は身に付くんだ?」
俺が柚希にすがる様に聞く。
「そこなんだよね~、う~ん」
そう言って柚希は俺をじーっと見た後
「お兄ちゃんの場合、コミュ力以前に改善しなきゃならない事がおおいんだよね~」
と言ってまた俺をじーっと見る。
「お、俺ってそんなにヤバイ?」
恐る恐る聞いてみる。
「私は何で昨日ギャルグループに囲まれたんだろうね~?」
柚希は嗜虐的な笑みを浮かべながらそう言った。
そうだった。
そもそも俺がリア充を目指すのは柚希が昨日のような目に合わない様にする為だった。 そしてその原因が俺のキモさだった。 あれ? これかなり難易度高いんじゃない? 俺が自己嫌悪で落ち込んでいると「ごめんごめん、冗談だから昨日の事はそんなに気にしないで」
「で、でも……」 「いいから! でも、お兄ちゃんが今どれだけリア充から遠いかは理解できたでしょ?」 「痛い程にな」そうだ。 今の俺は存在するだけで柚希を傷つける可能性があるのだ。
そして新たに決意を固めて質問する。「それで、俺は何をすればいい?」
俺の本気の顔を見て柚希がニヤッと笑い
「やっと本気の目になったね。それじゃあ……」
こうして俺がリア充に成る為の特訓が開始された。夜、新島の気持ちや俺の気持ちについて悶々としていると、新島からメッセージが来た。〈今日は本当にごめんなさい〉〈いや、気にしなくていいから〉〈ありがとう。それで明日なんだけど、一時間程早く学校に来れる?〉〈大丈夫だけど、なんで?〉〈話したい事があるから〉〈わかった〉〈ありがとう、おやすみなさい〉 ふぅ、なんかいつも以上に緊張したな。 それにしても話がある、か。 きっと今日の事だろうな。 今はあれこれ考えてもしょうがないし寝るか。 翌朝、いつもよりかなり早い時間に家を出た。 柚希に理由を聞かれたが、新島が話があるって言ってたと伝えたら何故か頑張れと応援された。 学校に着き教室に入ると既に新島が居た。 さすが10分前行動だな。「おはよう、早いな」「おはよ~、私もさっき着いたばかりだよ」 今日はどの新島だ? と考えながら登校していたが今の新島は学校での新島だ。「まだ早いとはいえ人が来たら困るから移動しよっか」「そうだな」 そういって俺達は教室を後にし、今は使われていない旧理科室にやって来た。 しばらく使われていなかった為、机等に薄くホコリが積もっている。 新島は教室の窓側の前の席にハンカチを敷いて座る。 俺も座ろうかと思ったがホコリを避ける物が無かった為立っている事にした。 そんな俺を見て新島が「立ってないで座りなよ」 と言って横に少しズレて隣をポンポンと叩く。 断る理由もないので隣に腰を下ろす。「えっと、話ってなんだ? 昨日の事なら大丈夫だからな」「昨日の事は関係…無くはないんだけど……」 さっき教室で話した感じだといつもの新島に感じたけど、今は昨日の新島みたいに感じる。「友也君はさ、二年生だけじゃなくて、一年生からも人気があるの知ってる?」 昨日柚希から聞
予定よりも早く帰宅した俺を見て、何かを察したのか柚希に引っ張られるがままに柚希の部屋に連れ込まれた。「何かあったの? こんなに早く帰ってきて。 それになんだかボーッとしてるし」「いや、ちょっとビックリする事があって……」 俺は今日の新島とのデートを一部始終話した。「う~ん、あの新島先輩が……」 さすがの柚希も言葉に詰まる。 俺なんて夢だったんじゃないかと思ってるくらいだし。「もしかしたら、今日の新島先輩が本当の素なのかもしれない」「素? 素はこの間みたいな冷たい感じじゃないのか? 常に注目を浴びる為に努力しまくる自己顕示欲と承認欲求の塊の」 そして柚希と同じく目的の為なら手段を択ばない。 その証拠に、俺に水瀬へLINEを送れと言って実行させた。後々水瀬が傷つくのを分かっていて。「それも素だと思う」「ん? つまりどういう事だ?」「覚えてない? お兄ちゃんが学校一のリア充になったら付き合ってあげるって言ってたでしょ」「言ってたな」「それに、新島先輩から言われたのはそれだけじゃないんじゃない?」 そう言われて思い出す。 柚希と新島の家に行く前の晩に通話してるときに『ちゃんと好きになってあげる。皆から羨ましがられるようなカップルになるの』 と言われていた。 この事を柚希に伝えると「やっぱり」「やっぱりって?」「新島先輩はお兄ちゃんの事が好きになってきてるの」「はぁ! いや、ありえないだろ。 それにまだ学校一のリア充とは程遠いぞ」 まぁ最近は観察のお蔭である程度の会話とかなら出来る様になったけど、ただそれだけだ。「お兄ちゃんは知らないかもだけど、一年生の間だとお兄ちゃん中居先輩より人気あるんだよ?」「それこそ何かの間違いだろ」「お兄ちゃんは春休みから色々な特訓をしてきたでしょ? その成果が出てるの。姿勢や表情は十分リア充だし、顔も元
柚希に見立てて貰った服を着て、昨日よりも早く家を出た。 10分前行動の新島を待たせたら何を言われるか分からない。 新島が何を考えているかは分からないが、初デートには変わりない。 ふと電車の窓に映った自分を見ると顔が少しニヤけていた。 危ない危ない。キチンと表情を作らないとな。『何ニヤけてんの? キモイ』 と言われるのが容易に想像できる。 楽しみにしてたとか思われたくないしな。 ターミナル駅に着き、待ち合わせ場所まで歩いていると、上り線の改札から新島が出てきた。 まだ約束の時間の20分前なのに。 早めに家を出て正解だった。「よ、よう新島、早いな」 と声を掛けるとビックリした表情で「え? 友也君こそ早いじゃん」 と返されたが、違和感がある。 そうか! 猫被ってるんだ。 俺しか居ないのになんでだろう。「ああ、昨日10分前行動は当たり前って言われたからな」「でも20分前はやりすぎじゃない?」「新島を待たす訳にはいかなかったからな」「友也君優しいね~」 なんだこれ? 学校での新島とも雰囲気が違う。 「それで、これからどうするんだ? 買い物するんだったよな」「うん、ちょっと見てみたい服とかあるから。ごめんね、付き合わせちゃって」「いや、別にいいけど」「ありがと♪ 行こっか」 駅の近くに目当ての店があるという事で、二人並んで歩き出す。 ターミナル駅なので構内は人が多い。ぶつからない様にと思っていたが様子がおかしい。 前方から来る人はまるで俺達を避ける様にずれる。 そしてすれ違いざまにこっちを見てくる。 最初はどうしてか分からなかったが、すれ違う人の視線を追うと皆新島の事を見ている。 新島の圧倒的な美少女っぷりで知らない人は気圧されてしまっているのだろう。 そんな美女の隣を歩く俺はどう見られてるんだろうか? というか俺は視界に入っていないかもしれ
少し強引だったかなと反省している。 でも、こうでもしないと友也君は私の気持ちに気づかないだろう。 いつからだろう、私が友也君を意識し始めたのは。 あれは確か一年生の時だった。 * * * * * * * * * 私には今、気になる奴がいる。 といっても、恋愛話とかそういう訳ではない。 そいつはいつも一人でいる。 クラスが違うので移動教室の時にそいつの居るクラスを覗くといつも一人で居て、寝ているかゲームをしている。 合同体育の時は一緒に授業を受けるのだが、やっぱり一人。 男子がサッカー、女子はそれの見学の時見てみたら誰からもパスされていなかった。 というかボールに触ってたかな? こんな感じでいつも一人で居る。 私にはそれが信じられなかった。 私は皆から認めて貰える様、評価される様色々な努力をしている。 今では学校一のアイドルとまで言われる様になった。 だから何の努力もしないアイツがキライだ。 夏休みを挟み、何か変わったかな? と見てみるとやっぱり一人だった。 ここで私はある事に気づいた。 もしかして虐められてるんじゃ? そう思った私は、そいつと同じクラスの仲のいい子にそれとなく聞いてみた。「ねえ、佳奈子」「なに~?」「あの、いつも一人でいる男子いるじゃない?」「ん? ああ、佐藤の事か」「そう、佐藤君」「佐藤がどうかしたの?」「いつも一人で居るから、もしかして虐められてるのかなって」「ないない、中居がそういうの嫌いだから中居に目を付けられる様な事する奴いないと思うよ」「そうなんだ、虐められてる訳じゃないんだ」「うん、でも何故かいつも一人なんだよね~」「そっか、ありがとう佳奈子。またクレープ屋行こうね」「うん! またね~」 佳奈子は嘘を吐く様な子じゃないので虐められてる事はなさそうだ。 なら何でいつも一人でいるのだろう?
帰宅し、夕飯や風呂等を済ませて落ち着こうとしたが落ち着けない。 柚希との会議はいつも両親が寝た後の11時からやっているが、時刻はまだ8時。 新島が俺を誘った理由、デートと呼ぶべきなのかどうか等色々頭を悩ませる疑問はあるが、一番の問題は『明日着ていく服が無い』 だった。 マネキン買いした服は今日着てしまったので、さすがの俺でも2日連続で同じ服を着ていくのはマズイとわかる。 なので一刻も早く柚希のアドバイスが欲しかった。 どうするか悩んでいたらスマホから通知音が鳴った。 画面を見ると柚希からだった。「今日の成果を楽しみにしてるよ~」 という内容だったが、この手があったか! 俺は単刀直入に「明日、新島から買い物に誘われたんだが着ていく服が無い」 とメッセージを打ち込んだ。 直ぐに既読が付いたので返信をジッと待つ。 中々返信が来ないのでもう一度メッセージを送ろうか迷っていると コンコンッ と誰かにドアをノックされた。 家族でノックする人物が思い浮かばなかったので不信に思っていると コンコンッ コンコンッ と再びノックされた。 俺は意を決して恐る恐るドアをあけると、そこには不機嫌な顔をした柚希がいた。「もう! 早く開けてよね」 と文句を言いながら部屋に入って来る。 俺は慌ててドアを閉めて柚希に尋ねる。「大丈夫なのかよ?」 「大丈夫でしょ、最近のお兄ちゃんは変わったなとか言ってたし」 両親は俺と柚希が仲良くする事に反対している。 中学の時の俺は学校だけでなく家でも殆ど喋らずゲームばかりしていたので、そんな俺と親しくしていると優秀な柚希まで変な目で見られるかもしれないという理由で、両親の前では会話すらできなかった。 そんな経緯があり、両親が寝た後に会議を開いていたのだが、まだ両親が起きてる時間に、しかも俺の部屋に柚希が居るとバレたらどう弁明しようか。「今日も帰
皆にバレない様に柚希から教わった店までを地図アプリで確認しつつ俺が皆を誘導する。 俺が美味しいパスタ屋を知ってると言ったので必然的にそうなる。 まさか俺がリア充を引き連れて歩くとは。 しばらくして目的の店に着いた。「ここのパスタが美味しいんだよ」 と知ったかぶりで言うが、柚希がオススメするぐらいだから間違いないだろう。「へ~、いい雰囲気の店だね」「佐藤すっごーい!」「友也って実は食通なの?」 皆褒めてくれるが、柚希のオススメに従っただけなので何だか申し訳ない。 申し訳なさを誤魔化す為、皆を先導する。「たまたま見つけたんだよ。それより早く入ろうぜ」 と言い店内に入る。 店内はアンティーク調でインテリアやテーブルもアンティーク一色で染められていた。 「うわ~すご~い」「うんうん」「へ~」 皆がそれぞれ感嘆の声を漏らし、席に案内される。 思わず俺も声が出そうになったが必死に堪えた。 席に着きそれぞれメニューに目を通しながら「どれも美味そうだな。やるな友也」「ホントホント、佐藤って実は学校では遊ばないで外で遊んでる系だったの?」「去年とのギャップがすごいね~」 とまたしても褒めてくる。 っていうか「及川、なんだそれ。俺は正真正銘のぼっちだったぞ。って言ってて悲しくなってきた」「「ははは」」 及川の変な誤解を解いたら笑いが起きた。 これが会話で人を笑わすということなのだろうか。「みんな決まった? 決まったなら注文するけど」 と皆の注文を確認する。 新島が「私は和風パスタね」と言った後、及川が「私はミートソース!」 と言った時に水樹と新島が同時に笑った。 何で笑ったんだ? と不思議に思っていると「及川はいつもミートソースだよな。他の食べてる所見た事ないわ」「佳奈子は相変わらずだね~」







